仏教の戒律にある殺生や煩悩を揺さぶられないことを主眼として調理された料理のこと
精進料理における定義は、動物性の食材を一切使用しないことです。
仏教の世界では戒律により在家の信徒は殺生を禁じられており、大乗仏教においては僧の肉食も禁じられていました。
そのため、僧俗への供養やお布施には野菜や大豆、穀物を中心に調理されています。
日本に仏教が伝来したとされる6世紀(飛鳥時代)頃、精進料理もこの頃から伝わりました。
仏教には在家の信者が守るべきとされる五戒があります。その中に不殺生戒があり、肉の代わりとなる工夫をしたものを作るようになりました。
奈良平安時代になると、唐代に西方から導入された水車動力によって、製粉技術が著しく高まりました。粉物の大量供給ができるようになり、小麦粉や大豆粉などと植物油や味噌などインパクトの強い調味料を合わせた精進料理を作ることができるようになりました。この頃、精進料理は寺院の正式な食事として取り入れられることになります。
鎌倉室町時代には仏教から複数の宗派が生まれ、寺院の食事だけではなく、庶民にも普及したとされています。
仏教の修行僧たちは宗派により戒律に差はありますが、明治時代までは肉を食べる習慣はありませんでした。その後は「精進落とし」の行いで通常の食事に戻すときもあります。
製粉技術の向上や食材を工夫する日本人ならではの料理方法で、食感のみならず味覚の調合から保存方法まで飛躍的に進歩を遂げてきました。
日本の本膳料理や、懐石料理は精進料理から派生したとされています。また天ぷらは「精進揚げ」とも呼ばれるほど精進料理とつながりがあります。
現代でもメニューは
「御飯」
「汁」…白味噌の汁
「平」…湯葉や麩
「木皿」…胡麻豆腐、コンニャク、栗、ごぼうなどの盛り合わせ
「壷」…根菜のおひたし
「香の物」…糠漬け
のような献立となっています。
魚や肉を出すことはできないため、豆腐などを練り込み、それに見立てたものが配膳されます。
現代では「料理」としての意味合いが一般的ですが、本来の精進料理には食物に対する真摯な態度、その食物を通して人を深く敬うことを意味しています。食や人に対するこころの原点です。食事ができる悦びと感謝の気持ちを大切に持ちましょう。